「暮らしたいところで働ける、場作り」

日本空糸は、アクセスが困難な高所にロープ技術を使って行き、必要な作業を行う会社です。2015年の創業以来、橋梁や道路、ダムなどインフラや防災を担うコンクリート構造物の調査・点検を、主な事業としてきました。
地元岩手県一関市に育った私は、若い人の大半が就職の際に都会を目指すなど、従来の仕事観や働き方、ライフスタイルの枠内で生きることが既定路線化されている状況に、疑問を抱いていました。日本空糸は、そこへの問題意識から、仲間と創業するに至った会社です。若い人にとって魅力的な仕事を地元につくり、心身すこやかに活躍できる、自由度の高い職場と働き方のロールモデルとなることを目指しています。
ロープワーカーであれば、住む場所や学歴、家庭の経済力を問わず志すことができ、子育てや介護中にも柔軟な働き方で成り立たせやすいはず。言うは易しで、ロープワークさながら道なき道を行きながら、経営に関してロープワークほどの技術を持たない私の会社運営は、試行錯誤の連続です。
そのように、計画通りとは言い難い歩みながらも、日本空糸は創業10年を迎えることができました。地元で、また業界内でそれなりに知られる存在となれたのは、多くの皆さまのご助力があってのことと感謝しています。多くのつながりの中で学び得たことは、なによりの財産です。
日本空糸のロープワークを説明するとき、私はよく、「筋肉でやらない」と表現します。依拠するのは筋肉でも感覚でもなく理論です。我々には、通常行けない場所に行った上で遂行すべきミッションがあり、多くの場合、それは調査・点検です。アスリートやクライマーのように、記録や限界に挑戦するのとはまったく異なる準備と心構えが必要です。安全性の確保を前提としたロープワークの技術やノウハウはもちろんのこと、目的を完遂するための適切なデータ収集には知識とノウハウが欠かせません。おそらくは見た目よりずいぶん地味で根気を要する作業だと思いますが、それができるのが日本空糸の大きな強みです。ロープワークのエキスパートでありながら、最善と判断すれば、ロープワーク以外をご提案することも厭いません。
日本空糸がこれまで実績を重ねてきた土木分野には、コンクリートおよび鋼構造物、地質、砂防、樹木など、多様な対象物、現場がありますが、今後はさらに、建築分野にも幅を広げていくつもりです。マネジメントを担うコアチームと現場ごとのスペシャリストが連携して機能させる、しっかりとした体制の構築にも取り組みたい。そのために、分野を横断して、各種のプロとのネットワークを強化しながら、同時に、未経験者を含めた人材の育成に力を入れていこうとしています。
我々のようなロープワーカーは、ヨーロッパで広く認知されているほか、アジアの一部の地域でも、専門職として一定の地位を確立しています。日本での浸透をはかり、高い技術を持つロープワーカーたちがさらに活躍、貢献できるよう、2024年に一般社団法人日本ロープ高所作業協会を立ち上げました。ここでも教育と育成に、一層注力していくつもりです。
ロープワーカーが貢献できるシーンは、潜在的にもまだまだあるはずです。例えばネイチャーガイドとなり、地元の自然を再発見するツアーのリーダーも担えるでしょう。役立つシーンを増やすことで、必要とする側とされる側双方の可能性を広げること、それによって社会の豊かさに貢献すること。自分の人生を賭けるに値する挑戦だと思っています。
楽しいと感じられる仕事をつくりたくて始めた仕事ですから、自分も楽しみながら邁進できるよう、これからも自らを鍛え、持てる力を尽くしていきます。
代表取締役
伊藤 徳光
