ロープ高所作業について
日本空糸の扱うロープ高所作業の技術は、洞窟探検をルーツとし、ロープ上に自身を固定し空間を移動する手段で、様々な環境に応用・適用され、レスキューの現場などにも使用され始めています。
Petzl(ペツル)の提唱する"Access the InAccessible"はまさにロープ高所作業のなんたるかを示しています。
産業用ロープアクセスだけでなく、山岳で使われるロープ技術、ツリーケアで使われるDdRTなども研究しており、日々技術の進化を進めています。
日本空糸は、『バックアップロープを使用した2本のロープで作業するためのノウハウ』、『産業用ロープアクセスの枠にとらわれない他分野のロープ技術のノウハウ』を持ち合わせています。
それらを組み合わせることで、どのような現場状況であっても"より安全な作業"をご提供することが可能です。
ロープ高所作業は、『高さ2m以上の場所で作業床を設けることが困難な場合に、昇降器具(ロープに身体を保持する器具を取り付けたもので、作業者が自らの操作により昇降する)を用いて行う作業』と定義されます。
産業用ロープアクセスをはじめ、ロープクライミング、ツリークライミング、ケイビングなどのロープ技術もその技術をもって作業にあたれば『ロープ高所作業』に分類されることとなりました。
●ロープアクセス橋梁点検作業計画書
- 調査目的
橋梁の現況と損傷箇所、程度を正確かつ詳細に安全に把握することを目的とする。
- 作業体制
基本3人体制で実施する。(調査員2名、橋面補助員1名)
橋梁の形式、点検内容に合わせて人員配置の変更や増員を行う。
- 調査員
ロープアクセス技術を駆使し点検を実施する。
- 橋面補助員
調査に必要な支点構築、遠景写真撮影、橋面の安全確保を実施する。
※調査員と橋面補助員の連携により、迅速かつ正確な点検を実現する。
- 作業手順
- 作戦会議(1回目)
資料を確認し必要器材の選定と現場での動きを確認する。
- 作戦会議(1回目)
- 事前準備
作戦に応じた必要器材の準備。器材の損傷、劣化を確認する。
- 現場移動
遠方であれば前日移動。近辺であれば当日移動する。
移動手段は車、電車、飛行機等から選定する。
金銭コストだけでなく、調査員への負担など現場の安全に配慮した選定をおこなうこと。
- 下見
現場到着後、遠望目視で橋梁の状態を確認する(15分程度)。
- 作戦会議(2回目)
遠望目視の結果を踏まえて、作業の動きを決定する(15分程度)。
- 作業開始
調査員はロープアクセス器材の準備を実施する。
橋面補助員は支点設置の準備を実施する。
- 支点設置
橋面補助員が指定箇所へ支点を設置する。
- 支点設置のポイント
- 堅牢な部材で支点を構築する。
※必ず仮荷重テストを行う。 - 2点以上の部材から支点を構築する。
- ロープがコンクリート面や鋼材に擦れる可能性がある場合はロープガードを用意する。
- 堅牢な部材で支点を構築する。
- 下降開始
下降用ロープの安全を確認(カラビナの向き、環の開閉、ロープの結び方)し、下降器を使用してゆっくり慎重に下降を開始する。
必要に応じてロープガードの設置や、リビレイ(中間支点の設置)、ディビエーション(下降方向の変更)等の技術を使用して安全に点検箇所へアクセスする。
- 点検実施
- 上部工点検
鋼桁であれば、吊ピースなどに支点をとり、トラバースによる移動を行い点検箇所へ近接する。
RC桁やPC桁のように支点が取れない場合は、コンクリートアンカーを設けてボルトトラバースを行う。
- 上部工点検
- 下部工点検
橋台、橋脚の橋座に自己確保した状態で取り付き橋座面、支承、桁端部の調査を実施。自己確保が難しい場合はボルトトラバースを行い近接する。
壁面は下降器を復数使用し、全面に近接する。
点検は変状箇所にチョーキング、サイズ測定、打音検査などを実施し、損傷程度を評価する。写真と野帳にて変状を記録し、移動を再開する。
変状調査を実施する際は、必ず下降器をハードロックする。
- 作業終了
作業終了後、橋面もしくは橋の下方へ離脱。
設置したアンカーをすべて撤去する。
- 撤収
すべての器材を片付け、橋梁に何も残していないことを確認する。
- 成果作成
事務所へ戻り点検結果から成果の作成を行う。
- 成果品
点検結果は国土交通省の「橋梁定期点検要領」に則った損傷評価を行い、損傷図へわかりやすく記載する。
必要に応じて、ドローンによる写真や補助スケッチ、CAD図面作成を行う。
- 安全管理
- 人材
- 安全な現場とするため、メンバー同士で声を掛け合う。
- メンバーの得手不得手を考慮した割振りをする。
- 情報を共有し、全体を把握しながら、効率よく調査を進める。
- 最悪ケースを想定し、余裕を持って作戦を実施する。
- 体調は良好か。
- 心配事は無いか。
- 器材
- ロープ
→使用前に必ず外皮状況とコアの状態を確認して使用する。 - カラビナ
→荷重をかける前に向きと環を確認。
→落としたカラビナは使用しない。 - スリング
→使用前にかならず繊維の状態を確認して使用する。 - ハーネス
→使用前にかならず繊維の状態を確認して使用する。 - その他
→無線によるこまめな連絡を実施し、お互いの安全を確認する。
※現場作業終了後に洗浄作業を実施。器材に損傷、劣化がみられる場合は破棄する。
- ロープ
- 技術
- 常に自己確保をとる。
- 常にロープに体重を預ける。
- 常に2ヵ所以上の支点を使用する。
- 常に器材が正しく機能しているかに配慮。
- いまそのときに、一番安全に実施できる方法を選ぶ。
- 指示、提案をされても、実施に不安がある場合は採択しないこと。
- 器材が壊れても自分が落下しないシステムを構築。
- 天候
安全のため、
「労働安全衛生規則 第522条」
で定められた悪天候の条件と雷以外で作業を実施。
- 人材
- 使用器材
- ロープ
- セミスタティックロープ(径8~11mm) ※長さは用途に合わせたものを使用。 ※スタティックロープ、ローストレッチロープなども使用することがある。 ※静止耐荷重2t強
- 支点設置用装備
- スリング
- カラビナ
- ロープガード
- ロープアクセス用装備
- ヘルメット
- その他
- 無線
- ロープガード
- スリング
- カラビナ
- 登高器
- 下降器
- フルボディハーネス
- 調査用具
- カメラ×2台
- 図面携行用バインダー
- 筆記用具
- クラックスケール
- FRP製伸縮赤白ポール
- チョーク
- 点検ハンマー
- その他
- ロープ
●法令を超える安全管理
当社は業界トップクラスの安全管理体制で運営しております。
- 安衛則 : “ロープ高所作業”を超える現場に則した安全管理を実施。
- 豊富な知見に基づく特別教育&講習の実施。外部講師による知識の増強。
- 器材のチェックから保管、使用方法に至るまでスタッフ全員が熟知。
→器材に不具合があったときの代替案も。 - 人的ミスがあっても機能するロープシステムの構築。
- 万が一に備えての「セルフレスキュー技術」の維持・向上。
→定期的にレスキュー訓練を実施。一般公開訓練も実施。